これが圧力というやつか。
浮気調査がメインだったオレにとって別世界の話だと思っていたが、まさか、その怖さを実感することになるとは……。
今回のレポートを見てもらうと、写真が少ないことがお分かりいただけるだろう。ターゲットである「フィッツ 十三」に在籍する浅田しおんちゃんが日中はOLをしているため、勤務先や自宅を特定する可能性のある写真はNGとなったのである。
といっても勤務先の会社からお達しがあったワケではなく、しおんちゃんの「ちょっとそれはごめんなさい」というリクエストと、店長さんの「そう言ってるので、写真は極力ナシという方向で」という声に従ったというのがホントのところだ。
えっ、「そんな簡単に屈服するのか」って? 当たり前でしょうが!! スポンサーの言葉は絶対だ。それに、プライベートを大切にしたいという、しおんちゃんの気持ちもごもっともである。
ということで今回は、オレの慌てふためきぶりがにじみ出たレポートとなった。
今回もアシスタントのKと早朝から、しおんちゃんが住む実家で張り込み。
6時を少し過ぎた頃、カーテン越しに明かりがつくのを確認。しかし、それが誰かなのかは分からない。しばらくすると、1階の台所らしき場所の換気扇が回る音がする。
「お母さんじゃないですかね」
「いや、本人が自炊しているかもしれないぞ」
「でもほら、出汁のにおいがしてきましたよ。いまどきの若い子は朝イチに煮物は作らないでしょう」
「それは偏見だ。それに、昨日の晩ご飯のおかずを温めなおしているだけかもしれないぞ」
朝からいい歳した男二人が中身ゼロの話をしていることに気づき、虚無感におそわれる。
小1時間ほど経過した頃、今度はお風呂場の換気扇が回りだす。
「しおんちゃん、お風呂入ってるみたいですよ」漂ってくる石けんのにおいを嗅ぎながらKが言う。
「それはお前の願望だろ。お母さんが入っている可能性……、いやいやお父さんが入っている可能性だってあるぞ」
「お父さんはこんないいにおいしないでしょう」
「それもオヤジに対する偏見だ。甘い香りのオヤジがいてもいいじゃないか!」自分のことを言われている気がして、思わず声を荒げてしまう。そして再び、巨大な虚無に包まれる。
玄関のドアが開き、しおんちゃんが出てくる。若いッ! まだ少女のあどけなさが残っていて、肌のツヤも20代半ばとは違う。
そんな若さの特権に気づいていないのか、しおんちゃんはマフラーで顔を覆い、足早に歩く。服装も普通の社会人という感じで、誰も夜になると人気キャバ嬢に変身するとは思わないだろう。このオン・オフのギャップを皆さんにお見せしたかった……。
電車に乗り、着いたのは大阪のオフィス街。しおんちゃんは、某オフィスビルに吸い込まれるように入る。エレベーターが止まったフロアの会社を確認したところ、女性を対象とした業界の会社であることが判明。
これまでネイル関連の仕事をしているコが多く、 ある意味“キャバ嬢っぽいな”と感じていたが、しおんちゃんの場合はガチOLである。もちろん週5フルで働いている。後に本人に「日中しっかり働いているのに、どうしてキャバ嬢するの?」と聞いたところ、「人と接することが好きだから」という答えが返ってきた。若さ故の勢いはあるものの(それがカワイイんだけどね)、ホントに人が好きであることが伝わってきた。
暇つぶしにオフィスビルの前で「センテンス・スプリング」を読んでいたら、もうお昼。ゾロゾロと制服を着たOLたちがランチを買いに出てくる。
しばらくすると、しおんちゃんも2人の先輩らしいOLと出てくる。どうやら彼女の会社は私服勤務らしい。彼女たちは近くのコンビニに。何を買うのかチェックすると、カゴに入れたのはジャスミン茶のみ。どうやらお弁当のようだ。やはり朝の煮物のにおいは、しおんちゃんのお弁当だったのだ。
買い物を済ませると、すぐさま会社に戻る3人。これといった展開はなし……。これじゃ、レポートにならん。徐々に焦りはじめるオレ。そんな心配などお構いなしに、Kは呑気にスマホでパズルゲームをしている。1回、本気で殴ってやりたい。
結局17時に仕事が終わるまで、しおんちゃんは会社を出ることはなし。しかも帰りも、仲の良さげな男性先輩社員と出てくることもなく直帰。“超”がつくくらい真面目だ。
この調子なら、 「フィッツ 十三」に出勤するまで動きはないという探偵の勘がはたらき、Kと牛丼屋へ。箸でなくレンゲを使って食べるKにイラッときながら、特盛りのツユ少なめをかき込む。ちなみにオレは、店で出来たて牛丼を食べるよりも、冷えて味がしゅんだ“冷え牛”が好きだ。
しおんちゃんの家に戻りしばらくすると、彼女が外に出てくる。出勤だ。
さすがに朝の出勤姿とは異なり、服はカジュアルな雰囲気になり、髪もおろしてキャバ嬢っぽくなっている。たぶん、お昼の会社の同僚が今のしおんちゃんを見ても、同一人物だとは思わないんじゃないだろうか。つくづく女は怖い。
そうこうしている間に「フィッツ 十三」に到着し、しおんちゃんはお店の中に入っていった。
今回はお店が混んでいて、しおんちゃんも指名でいっぱいということで、ネタばらし。お客さんが来るまでの15分をもらい、話を聞かせてもらうことにした。
彼女が隣りに座り、最初に受ける印象はスタイルが抜群にいいこと。締まるところは締り、出るところは出ている、いわゆる“ボン・キュッ・ボン”スタイルだ。特にバストにはクギづけ状態。本人曰くBカップとのことだが、おそらくDカップ……いやEカップはあるのではないだろうか。
しおんちゃんの魅力は、いい意味で“素”の女のコだということ。しらじらしく客を持ち上げることはしないし、かといってもちろん無愛想ということはない。とにかく自然体なのだ。だから、彼女のさり気ない笑顔や言葉が男心をくすぐる。こんな新鮮なときめきを感じさせてくれるキャバ嬢って、いるようでなかなかいない。リピーターが多いこともうなづける。
仕事を終え、お店を出るしおんちゃん。もちろんオレがまだつけるとは思っていない。
といってもどうせ、どこも寄らずに直帰だろうと思っていたら、お店の2軒隣りにあるワインバルへ。もしかしてアフターか? それとも……。とその時、お店の同僚たちも同じくワインバルへ。
どうやら次の日は土曜日ということで、この日はお店の友だちと盛り上がる様子。実際、閉店まで女子会は大盛り上がりとなった。
お店から出てきたご機嫌のしおんちゃんに「お昼の写真、使ってもいいよね」と振ってみたところ、「それはホンマ、ごめんなさい」と、改めてNG。しっかりしてるわ……。
日をあらため、しおんちゃんのお部屋写真とセクシーショットをオファー。
「でも私、実家暮らしなんで、あんまりおもしろいことないですよ」と、つれない返事。
「おもしろいかどうかは男性サイドが決めるから、とりあえずお願い!」ということで、送られてきたのがこの2枚。
「キャラクターのぬいぐるみがいっぱい。女のコらしくて、カワイイじゃない」
「好きなんです、ぬいぐるみ。お客さんからプレゼントしてもらうと、3割増しでステキに見えます」
「小悪魔的な一面もあるんだ。それは良いとして、もう1枚の写真は何?」
「何って、トレーニングマシンですよ。最近買ったんです」
何でも、しおんちゃんはこの3ヵ月あまりで5キロも痩せたとのこと。そして今はこのマシンで腹筋を鍛えているのだとか。
「せっかくだから、これで鍛えている写真、送ってよ」
「じゃあ、次の写真送りますね」オレのリクエストは軽くスルーするしおんちゃん 。このコ、男を手なづける技術をもっている。
「ぬいぐるみと一緒のところです♪」
当然のことながら、ぬいぐるみなどに興味なし。興味があるのは胸元だけ!!
デカい。
「ぬいぐるみもカワイイけれど、大きい胸してるね」日本語としてまったく成立していないが、そんなことはどうでもいい。ねらうは、バストのセクシーショットのみ!
「胸元にホクロがあるって言ってたけど、どこにあるの?」誘導尋問でアップの写真を送ってもらう作戦に出る。
そして、送られてきたのが、この写真。
うひょ〜♡ 色っぽい。というか、妙にエロい。この感じなら、もっといける! そう踏んだオレはさらにおねだりメールを送る。
「ごめんなさい、友だちと連絡とらないといけないので、また明日送りますね」
それから締切の今日まで、一切連絡はない。
店長さんに看板に「イカすシール」を貼ってもらうようお願いしたところ、「パソコンで合成して、貼ってある風にしてもらえると助かります」という返答。
そら、変な剥がれ方したら看板汚れますもんね。「フィッツ 十三」、すべてにおいてソツがないというか、デキる店だわ。
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